【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
リナちゃんは、こんな人のために……大変なマネージャーを二年もしてたんだ。

こんな人のために……私に、『サッカー部のことよろしくね』って、頭を下げたんだ……。



……っ。


体が言うことをきかなかった。



「……っ、え?」



気づけば私は壁から離れて、ケンくんたちの前に出ていた。



「花染、さん?……えっと……」



突然出てきた私を、驚いた表情でみる部員さんたち。

その真ん中にいる、久しぶりに見るケンくんの姿。



「ど、どうしたの静香ちゃん……?」



苦笑いを浮かべながら、私の名前を呼んだケンくんをじっと見つめた。



「……めて、ください……」

「え?」

「……リナちゃんの悪口言うの……やめてくださいっ……!!」



そう発した言葉は、情けなく震えていて……

私は自分が泣いていることに、ようやく気づいた。



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