【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
普段そこまで感情の波が揺れることはないのに、今はもう、悲しい気持ちと怒りでいっぱいだった。
「どうして笑ってそんなことが言えるんですか……ケンくんは、最低です……!」
リナちゃんは、私の大事な友達。
いつだって私に元気をくれる、太陽みたいな女の子。
体操ジャージのズボンを、ぎゅっと握りしめた。
「リナちゃんがどれだけケンくんのことを想ってたのか、どんな気持ちで別れようって言ったのか、どうしてわからないんですか……?」
泣きながら話す私を、唖然とした様子で見つめるケンくん。
知らなかった。浮気だったなんて。
リナちゃんがそれを言わなかったのはきっと、私が聞かなかった以外に……ケンくんのことを、考えたからだと思う。