【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ケンくんのことを思って、何も言わずにサッカー部をやめて、ケンくんの評判が下がらないように……
そんなの、あんまりだ。
ボロボロと、涙が止めどなく溢れ落ちる。
悲しい、悔しいっ……。
「リナちゃんはうるさくなんてない……ひどくなんかない、誰よりも可愛いです……!誰よりも、優しいんです……!リナちゃんを傷つけるようなこと言ったら……私が許しません!!」
そう叫ぶように言い放って、私はケンくんに背を向けた。
逃げるように、人影のないところへと走った。
合宿場の裏まで走ってきて、壁に体を預けながらしゃがみ込む。
ケンくんの話をする、リナちゃんの姿が脳裏をよぎった。
『ほんとあいつ、あたしがいなきゃ何も出来ないのよ。仕方ないからマネージャーもやってやったの』
『頼りないけど、優しいやつなのよ。お人好しでさ。まぁそういうとこが……好きなんだけど』
……っ。
リナちゃんの気持ちを知っていたからこそ、悔しい。