【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
……酷いこと言ってるなぁ……二年か?
俺に続いて、和泉も足を止めた。
俺たち二人にとって貴重な人材だったリナちゃんの陰口は、聞き捨てならない。
「俺も思った。ご飯も美味いし、俺らにも優しいし!」
……確かに、静香ちゃんは想像の何倍も優秀だった。
こいつらの意見もわかる。でも、だからってリナちゃんを否定していい理由にはならない。
サッカー部の母として、一年と少しの間ずっと支えてくれてたんだから。
リナちゃんは男友達みたいだったし、出来れば残っててもらいたかったんだけど。
理由は知らないけど、彼氏と別れたらしい。
二年の部員で、確か相手の名前は……
「一時はどうなることかと思ったけど……よくやったなケン!」
そうそう、ケンって呼ばれてるやつ。
キャプテンなのに、あんまり話したことないや。
つーかなに、元カレが愚痴言ってんの?
和泉は一言も話さず、じっと話を聞いていた。
俺も、悪いとも思わず立ち聞きを続ける。
「そういや謙二、なんでリナちゃんと別れたの?」
「お前知らねーの?浮気だよなぁケン」
「うわ、ひっでー」
……あー、なるほど。
急に彼氏と別れたからやめるって言ってたけど、そういうことだったのか。