【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
2回目、か……。
忘れもしない、初めて会った日。
「あの時は、どうして泣いてたの?」
「あ……」
気になって特に考えもせずそんな聞き方をしてしまった俺に、静香ちゃんが困惑した声を漏らす。
「ごめんね、言いたくないならいいんだ」
今の質問は流石に、デリカシーなかったな……。
気になったとはいえ、静香ちゃんだって聞かれたくないことはあるだろう。
そう思ったけれど、静香ちゃん首を左右に振った。
「……い、いえ!そんな、大した理由ではないんですけど……」
俺に気を使ってくれたのか、恐る恐る口を開く。
「失恋、してしまって……」
「……え?」
……失恋?
「静香ちゃん、好きなやついたの?」
「……はい」
あー……そうだったんだ。
好きなやつ、いたんだ。