【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ダメだ……佐倉先輩を、誤魔化しきれる気がしない……。
「まさか和泉だとは思わなかったけど、確かに静香ちゃん、和泉の前だと少し変だったよね」
「……」
「そっか、そうだったんだ……驚いた」
何も言い返せなくて、手をぎゅっと握った。
口が滑っただなんて、酷い言い訳だっ……。
「さ、佐倉……せんぱいっ……」
私、何やって……
「……え?し、静香ちゃん!?どうして泣くの……!?」
再び泣き出した私を見て、佐倉先輩が慌てた様子で顔を覗き込んできた。
縋る勢いで佐倉先輩を見つめて、震える唇を開く。
「い、言わないでっ……あの、私、好きって、ダメで……っ」
和泉くんに、この気持ちがバレたら困るっ……。
私の気持ちは迷惑にしかならないから、気づかれないように必死に押し殺してきたのに……