【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
《第1章》好きな人
一目惚れ
朝。早く学校に来て、花壇の水やりをする。
それが、毎日の日課だった。
誰よりも早く教室について、花瓶の水を入れ替えて。そして、お気に入りの小説を読む。
私の、何気ない日常。
「静香ー!」
私の名前を呼ぶ声が聞こえて、現実世界へと呼び戻された。
小説から視線を声の主に移すと、いつの間にか人が増えた教室が目に入る。
「あ……おはよう、リナちゃん」
「まーた読書に没頭してたの?ほんと、そんなの読んで何が楽しいのよ」
「え?凄く面白いよ?リナちゃんも読む?」
「無理。あたし活字ダメなの」
そう言って私の隣の席に座ったのは、親友の松井リナ(まつい りな)ちゃん。
高校に入ってから、ずっと同じクラスで、一番仲良くさせてもらっている女の子。
私とは違って、明るくて、ハキハキとしていて、とっても頼りになるリナちゃん。