【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
そういうのは……好きな人とじゃないと、ダメだと思う……。
「うん、わかった。ゆっくり考えてほしい」
「は、はい……すみません」
「静香ちゃんが謝る必要ないよ。それに、別に断ったからって、和泉のことは言ったりしないから」
優しく微笑みかけてくれる佐倉先輩に、涙が出そうになった。
即答出来ない薄情な私に、こんな優しくしてくれるなんて……どこまでも良い人……。
ちゃんと、前向きに考えよう。
きっと今返事が出来ないのは、和泉くんへの気持ちが残っているからだ。
早くこの気持ちを払拭出来さえすれば、佐倉先輩に協力できるはず。
こんなにも良くしてもらっているんだから、少しでも恩を返したい。
「もう一回聞くけど、気持ちは落ち着いた?もう涙は出ない?」
「はいっ」
「よかった。それじゃあ、そろそろ戻ろっか?」
私の頭をポンっと撫でてくれた佐倉先輩の言葉で、思い出した。