【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「私、洗濯の途中だったの忘れてました……!」
仕事中だったのに……!
今何時だろうと思い時計を見ると、結構な時間が過ぎていてサーっと血の気が引いていく。
「大丈夫大丈夫。柴原には俺の手伝いしてもらってたって言っとくから。あんまり無理しないでね」
佐倉先輩の優しさに、もう頭を下げるしかなかった。
紳士って言葉がここまで似合う人に、初めて出会った気がする……。
「ありがとうございます……」
もう足を向けて寝られないなと思いながら、サボってしまった分頑張ろうと気を引き締めた。
「あーあ。静香ちゃんが鈍感でよかった。遠慮なく邪魔できるよ」
並んで歩きだした中、佐倉先輩が呟いた言葉に首を傾げた。
「え?どう言う意味ですか?」
「ううん、こっちの話」
……?
邪魔って……私助けられてしかないのに……。
そう思ったけど、あまり深くは聞かないことにして、二人並んで宿舎に戻った。