【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「昨日は、ごめんなさい……!」
……え?
深々と、頭を下げたケンくん。
「俺……ほんと、最低なこと言ったよね……。凄い情けないんだけど、ちょっとヤケになってたんだ」
ゆっくりと頭をあげたケンくんの顔は、苦しそうに歪んでいた。
「リナのこと、うるさいとか可愛げないとか、思ってないこと言って、静香ちゃんにまで嫌な思いさせてごめん……。本当はさ、構ってもらえないのが寂しくて、八つ当たりっていうか……とにかく、本当にごめんなさい……!」
もう一度頭を下げたケンくん。その言葉は、ちゃんとケンくんの本音に聞こえた。
「そう……だったんですか……」
二人にしかわからないなにかが、きっとあったのかもしれない。
私はそこに首を突っ込んだだけだから、私に謝る必要はないのに、わざわざ謝ってくれた誠意には向き合いたいと思った。
「安心してください。私も、リナちゃんに言うつもりはないです」