【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
リナちゃんが傷つくってわかってるようなこと、伝えるつもりはない。
「俺、本当はリナとやり直したいんだ。でも連絡も取れなくて、どうしようもなくて……」
困った様子で、後ろ髪をかくケンくん。
ケンくんはケンくんなりに、謝りたいのかもしれない。
「私はリナちゃんの親友で、リナちゃんの味方なので、なんのアドバイスも出来ません……。でも……」
ひとつだけ——
「リナちゃんのことを泣かせたら、次はもっと怒ります……!それだけは、憶えていてください」
まっすぐケンくんを見てそういえば、ケンくんは一瞬目を見開いたあと、真剣な表情を浮かべた。
「うん。約束する」
その瞳が嘘をついているようには見えなかったから、大丈夫。きっと。
「昨日は、あの佐倉先輩にも怒られたし、年下の和泉にまで説教されたよ……」
「……え?」