【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ケンくんとその友人さんたちは、そう言って足早に去って行った。
ケンくんたちが行ってしまって、再び一人きりになる。
私はその場に、崩れるようにしゃがみ込んだ。
ダメだ……私、ほんと……
「……っ、やだ……」
もう、考えたくないのに。
考えちゃダメなのに。
頭の中が和泉くんでいっぱいになって、それと同時に、好きって気持ちが止まらなくて、もう苦しい。
どうしてこんなに未練がましいんだろう。
そうして私は、こんなに和泉くんのこと……
好きで、どうしようもないんだろう……。
自分の感情が制御できないことなんて、和泉くんに出会うまではなかったのに。
ダメだと思うことには手を出さなかったし、願っても手に入らないとわかっているものを、欲しがることもなかった。
でも、この気持ちだけは自制が効かない。