【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
涙が止まらないわけじゃなかった。
ただ静かに、溢れていた。
蓋をしても押し返して溢れようとする、私の恋と一緒に。
……やめよう。
結局、こんなことを考えていたって一緒なんだ。
不毛な恋だって、もう十分わかっているし、泣いていてもなんにもならない。
『和泉が、すっげー怖い顔で俺らのところに来て、「理由があったとしても浮気するやつは最低だ」「あの人に謝れ」って……後輩のくせに、威圧感が凄くて……ちょっと怖かったよ』
きっと、和泉くんは真面目な人だろうから、浮気とかが許せなかったんだろうなぁ……。
和泉くん、いつから練習参加できるだろう……。
昨日も少し辛そうだったから、今日は無理かな?
ケンくんたちに言ってくれたこと、それと……追いかけて来てくれたこと……
お礼だけでも、言いたかった……。
そう思うけど、やっぱり「迷惑になる」という感情が私を踏みとどまらさせた。