【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


「あのね、これ持ってきたから食べて……!」



ひとりのその言葉に、俺はゆっくりと体を起こした。

……どういうことだ?


女が差し出してきたお盆に乗った、昨日と同じような鍋に入ったおかゆ。

嫌な予感がして、俺はすぐにひとすくいして口に運んだ。


昨日と同じ味がして、ごくりと飲み込む。



「……お前が作ったのか?」



多分、こいつらに言葉を発したのは初めてだと思う。

嬉しそうに表情を明るくさせたマネージャーたち。



「う、うん!みんなで作った、かな……!」

「ちょっ、なに嘘ついてんのよ……!」



意見が割れているマネージャーを睨みつけると、途端に口を閉ざしたふたり。

もうひとりのマネージャーが、俺の顔色を伺うように口を開いた。



「えっと……静香先輩に、頼まれて……」



……やっぱり。

自分で作ったとか嘘を吐いたことはもうこの際どうでもいい。こいつらがそういう人間なことはわかってる。
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