【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


ひとりになって、口からこぼれたため息。

頭の中は、わからないことだらけで渋滞していた。


俺が今まであんな態度をとったから、内心嫌われてたとか……?

自分の過去の行いを思い返すと、充分納得できる。

酷い言葉ばかりを投げた。そんな俺の顔なんて、本当は見たくなかったのか?

だったら、なんで来てくれるって、約束したんだよ……。


心待ちにしていた数分前の自分が、恥ずかしくなった。







翌日。


体調……まだしんどいけど、動けそう。

なんとか部活に参加できるかどうかくらいまで回復して、昼過ぎに布団を出た。


久しぶりに風邪ひいたから、治るのが遅すぎた。
何日布団の上生活やってんだ……と、情けなくなる。

せっかくの合宿なのに、これ以上休み続けるわけにはいかない。


ジャージに着替え、廊下に出た。

グラウンドに行こうと歩いていると対向側から誰かが歩いてくる。


よくみると、その誰かは佐倉先輩だった。



「……和泉?お前なにやってんの?」

「なにって……部活行こうと思って……」



俺の言葉に、驚いた表情をする佐倉先輩。



「お前まだ万全じゃないでしょ。ちゃんと治るまで安静にしろ」

「……嫌です」

「わがまま言うんじゃない。はぁ……部屋戻るぞ」

「……無理です」



その後も抵抗したが、結局部活参加の許可はおりず、部屋に連れ戻されることになった。


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