【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「部屋戻る?送るよ」
首を傾げた私へ、そう言ってくれた佐倉先輩。
「大丈夫です」と言ったけど、「ついでだから」と言われ、お言葉に甘えることにした。
「もう体調は平気?……って、まだ万全じゃなさそうだね」
え?そ、そんなふうに見えてるのかな……?
「いえ、もう大丈夫です」
心配をかけないよう、背筋を伸ばし大丈夫ですとアピール。
きっと佐倉先輩が一番疲れているだろうから、私なんかが疲れなんて、見せちゃダメだ。
「嘘だ。静香ちゃんは大丈夫が口癖だから、信じない」
「ええっ……う、嘘じゃないです!」
「ふふっ」
か、からかわれてる……?
恥ずかしくて視線を下げると、佐倉先輩はそんな私の顔を覗き込んでくる。
「……この前のこと、考えてくれた?」
その言葉に、どきりと心臓が跳ね上がった。