【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
この優しさに、何度も何度も救われた。
できるだけ早く、答えを出そう……。
うう……リナちゃんに相談したいけど、こんなこと言うべきじゃないよね……。
これは、私がひとりで決めなきゃいけないことなんだっ……。
「ありがとうございます」
そう言って、頭を下げる。
私の泊まっている部屋が前に見えてきて、佐倉先輩が頭をぽんっと叩いてきた。
「それじゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさいっ……」
もう一度、ぺこりと頭を下げた。
手を振って行ってしまう佐倉先輩の背中を、じっと見つめる。
私じゃなくても……佐倉先輩の彼女役をしたいって言う子は、たくさんいると思うけどな……。
あっ、でもそれじゃダメなのかっ……自分に興味がない子を彼女役にしなきゃいけないってことだよね……。
って、それじゃあ私が佐倉先輩に興味がないみたい。
もちろん素敵な人だと思うし、一人の男の人としても、魅力的な人だとは思ってる。
ただ……。
結局、詰まる所はそれなんだ。
私をここまで頑なにするのは、和泉くんの存在。