【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「で?どうするのよその彼女のフリってやつ」
食い気味に聞いたきたリナちゃんに、私は首を横に振った。
「……ちゃんと、断る」
考えて考えて、出した私の結論。
恩知らずだってわかっているけど……それでも、やっぱりフリでも付き合うなんてできなかった。
佐倉先輩のお願いだけど、それだけは、どうしても……。
「えっ、断るの?」
「うん……やっぱり、ダメだと思って」
私は、ほんとに嫌になるくらい諦めが悪くて……。
叶うことのない恋でも、この気持ちが消えるまでは……和泉くんのことを想ったままでいたい。
この気持ちを抱えたまま恋人のフリをするなんて、佐倉先輩にもやっぱり不誠実な気がした。
「佐倉先輩には本当にお世話になったから、その恩はちゃんと別の機会で返すつもり」
他の頼みごとなら、なんだって協力させてほしい。
そのくらい、恩を感じているから。
「和泉は?」
「えっ……?」
和泉くんの名前に、驚いてあからさまに反応してしまった。