【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




放課後になり、佐倉先輩と待ち合わせしているサッカー部の部室前に向かう。

今日は練習はないらしく、誰も使っていないから話をするならそこでということになった。


断るのが申し訳なくて、今から罪悪感に押しつぶされそうだ。


誰もいない部室の前で、佐倉先輩を待つ。

今日は新学期初日だから、どこの部もお休みなのかな……人がいない……。

サッカー部の隣のバスケ部と陸上部にも誰も現れないということは、きっとお休みなんだろう。



「お待たせ」



少し経って、佐倉先輩が現れた。

「遅れてごめん」と言いながら、走ってきてくれる佐倉先輩。



「ごめんね、ホームルーム長引いちゃって」

「いえ……私のほうこそ呼び出してすみません」



2日ぶりなのに、なんだかとても久しぶりのように感じた。



「それで……話って、多分あのことだよね?」



私が呼び出した理由はもうばれているらしく、こくりと頷く。



「はい」

「中入って、座って話そっか?」



笑顔の佐倉先輩に促されるまま、部室の中に入った。

一度だけ、説明の時に入ったことのある部室。
< 430 / 507 >

この作品をシェア

pagetop