【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜

「……やっぱりそっか。うん、なんとなく断られる気はしてた」



その笑顔に、罪悪感が膨らみ視線を逸らしてしまう。

けれど、次に飛んできたのは予想外の言葉だった。



「静香ちゃんには、直球じゃないとだめだってわかったから」

「え？」



直球じゃないとって……どういう、意味？

気になって佐倉先輩をじっと見つめると、先輩は表情を変えないまま、とんでもないことを口にした。



「俺、静香ちゃんが好きなんだ」



一瞬理解することができなくて、時が止まったように固まってしまった。

好き……？

もちろん、私も佐倉先輩のことは尊敬しているし、好意的に思って……。

そこまで考えて、私はある可能性を見つけてしまった。


もしかして、好きっていうのは……そういうことでは、なくて……？



「……あ……え、っと……」



そんなわけ、ないと思う、けど……。

だって、佐倉先輩みたいな素敵な人が、私を好きになる理由がない。


そう思ったけど……



「意味、わかるよね？」



佐倉先輩のその言葉とさっきとは違う真剣な表情に——私は、気づいてしまった。

佐倉先輩が私に向けている、好意の意味に。