【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜

自分も片思いしているからこそ、その気持ちが痛いほどわかる。

私みたいなのが、佐倉先輩のような素敵な人に告白されることなんて、きっと人生で最初で最後だろう。

こんなふうに想われて、いやだなんて思うわけない。


でも、

で、も……



「ごめん、なさい……」



私は、どうしても……



「やっぱり、和泉がいい？」



心の中を見透かしたように、そう聞いてくる佐倉先輩。

その通りですと返すのも苦しくて、胸をぎゅっと押さえた。



「でも、和泉は静香ちゃんを好きになってくれないでしょ？」



はっきりと、否定しようのない事実を突きつけられて、一瞬怖気付くように肩が跳ねあがった。



「それは、わかってるんです……一方通行でも、いいんです……」



好きになってほしいなんて思うことは、もう諦めた。

それに、私は和泉くんと両思いになりたくて和泉くんを好きになったわけではない。


ただ好きでいたい。