【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




今は本当に……それだけで幸せ。


同じ学校に通っている。たまに会えるかもしれない。

そんな些細な接点だけで、いいんだ。


偽善だって思われるかもしれないけど、それくらいどうしようもないほど、和泉くんに焦がれてる。



「そういう健気なところ見せられたら、ますます諦められなくなる」



頭上から苦しそうな声が聞こえ、顔を上げる。

途端、佐倉先輩が近づいてきて、壁に押し付けられた。


どうすることもできず、ただ佐倉先輩を見つめ返す。



「お試しでも構わない。俺が絶対に、和泉のこと忘れさせてあげる」



佐倉先輩はそう言って、顔を近づけてきた。



「だから……俺にしなよ」



何をされるかわからず、ぼうっとしてしまった私の唇に、柔らかい感触が降ってくる。


……え?


今、私……

佐倉先輩に、キス、されてる……?




——ガチャッ

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