【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「悪いけど、今日部室使うから自主練禁止だよって言いにきたんだ」
……は?
「何に使うんですか?」
部活のミーティング……?いや、それならレギュラーの俺も呼ばれるはずだ。
佐倉先輩を見ながら目を細めて俺を見て、にっこりと効果音がつきそうな笑顔で口を開く。
「今から、静香ちゃんと会うんだ。ゆっくり話したいから」
さらっと告げられた言葉に、あからさまに眉を動かしてしまった。
……部室で会うってことか?静香先輩と……?
「……別に、部室じゃなくてもいいじゃないですか」
そんな密室で、何を話すことがある……?
この人、本当に何を考えてるんだ……?
「もう待ち合わせしてるからね。ってことで、今日はまっすぐ帰りな」
「じゃあね」と言い、教室を出て行った佐倉先輩。
俺はカバンを握る手に、無意識に力を込めていた。