【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
さっきも……
どうして部室に……戻ってきて、くれたんだろう……。
「……あの、すみません、強引に連れ出して……」
わからないことだらけで戸惑っていた私に、和泉くんが申し訳なさそうに謝ってきた。
そんな、謝罪の言葉なんていらないのにっ……。
「い、いえ……ありがとうございますっ……」
むしろ、あのまま佐倉先輩とふたりでいるのは怖かったから、連れ出してくれて……本当に助かったっ……。
お礼を言った私を見て、和泉くんが眉間にシワを寄せた。
「……ありがとうございますってことは、あれは合意じゃなかったってことですか?」
「……え?」
「……キス、されてたじゃないですか」
……っ。
やっぱり、見られてた……。
和泉くんに見られていたという事実に、泣きたくなった。
「あ、れは……」
和泉くんにだけは……見られたく、なかったっ……。