【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「その、突然、で……わからなくって……」
佐倉先輩がどうして急にキスなんてしたのか……告白はされたけど、同意もなくあんなことをされると思わなかった。
でも……それだけ私は、佐倉先輩を傷つけてしまったってことかな。
佐倉先輩の気持ちにも気付かずに、今まで無神経なことをしてしまったのかもしれない。
これは、私への罰なんだ、きっと……。
そう受け入れようと思うのに、涙が溢れて止まらなかった。
「泣かないでください」
和泉くんの指が、すっと伸びてくる。
その指が、私の涙を拭った。
驚きのあまり、涙が一瞬で引いてしまう。
和泉くんは私の頬から手を離し……そのまま、優しく抱きしめられた。
「その……もう怖くないですから」
……っ、え……?
私、どうして和泉くんに、抱きしめられてっ……。
「い、和泉くんっ……」
思わず、和泉くんの胸を押して離れた。
和泉くんに抱きしめられているという事実に、頭の中の整理が追いつかなかった。