【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



「その、突然、で……わからなくって……」



佐倉先輩がどうして急にキスなんてしたのか……告白はされたけど、同意もなくあんなことをされると思わなかった。

でも……それだけ私は、佐倉先輩を傷つけてしまったってことかな。


佐倉先輩の気持ちにも気付かずに、今まで無神経なことをしてしまったのかもしれない。


これは、私への罰なんだ、きっと……。


そう受け入れようと思うのに、涙が溢れて止まらなかった。



「泣かないでください」



和泉くんの指が、すっと伸びてくる。

その指が、私の涙を拭った。


驚きのあまり、涙が一瞬で引いてしまう。


和泉くんは私の頬から手を離し……そのまま、優しく抱きしめられた。



「その……もう怖くないですから」



……っ、え……?


私、どうして和泉くんに、抱きしめられてっ……。



「い、和泉くんっ……」



思わず、和泉くんの胸を押して離れた。

和泉くんに抱きしめられているという事実に、頭の中の整理が追いつかなかった。

< 451 / 507 >

この作品をシェア

pagetop