【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「それは、偶然でも聞かれたくなかったかなって思って。勝手に聞いてすみませんっていう意味の謝罪だったんですけど……」
和泉くんはそう言って、一度考えるように口を閉ざした。
そして……
「……静香先輩、もしかしてなんですけど……」
真剣な表情で、私をじっと見つめた。
「年下の好きな男って……俺じゃないですよね?」
……っ。
てっきり、私が和泉くんを好きだと聞いてしまったってことだと思ったのに。
それは、知らなかったってこと……?
ってことは、自分で墓穴を掘ってしまった……っ。
あからさまにびくりと反応してしまった私に、和泉くんの瞳の色が確信に変わった。
「……え?……は?本当に……?」
どうし、ようっ……。
「ち、違います……!ごめんなさいっ……」
掴まれている手を振り払い、今度こそ逃げようと教室の扉を開ける。