【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「……っ、それは、すみません……」
違う……そんな、謝ってほしいわけじゃないっ……。
私が勝手に好きになって、勝手にフラれただけだから、和泉くんは何も悪くないのに……。
首を何度も、横に振った。
好きな人に謝らせてしまったことが、心苦しい。
「……でもそれって、そんな前から俺のこと好きだったってことですか?」
「……っ」
「いつからですか?」
まだ問い詰めてくる和泉くんに、顔を伏せたまま口を開く。
「図書室で、男の人たちに絡まれてる時……助けて、くれました……」
私の答えに、和泉くんは驚いた様子で息を飲んだ。
「……っ、そんな前から?あれ、5月とかじゃなかったですか……?」
和泉くん……憶えてるんだ……。
きっと和泉くんにとってはなんでもないことだっただろうから、記憶にすらないと思っていた。
同じ記憶を共有していた事実に、感動にも似た気持ちが芽生えた。