【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「あ、ち、違うんです……」
「ん?」
「和泉くんの家にいると思うだけで、ドキドキしてしまって……」
緊張してるのは、和泉くんのお家にいるからで……。
「……ただのボロアパートですよ」
「好きな人のお家ってだけで、特別です……」
知らない一面が見えるたび、
知らないことが減るたび、嬉しくなる。
片思いしている時は、恋は辛いものだと思っていた。
でも、和泉くんとお付き合いを初めてから、恋がこんなに素敵なものだと知った。
全部全部——和泉くんが教えてくれた。
「私、こんなに幸せで大丈夫でしょうか……」
なんて贅沢な悩みなんだと自分でも思うほど……。
「だからそれは、俺のセリフですってば」
「い、いえ、私のセリフです……!これだけは譲れません……!」
絶対に、私のほうが好きな気持ちが大きいと断言できる。
気持ちは競い合うものではないけれど、和泉くんへの気持ちだけは、誰にも負けない自信があった。