【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「どうしてそこで頑固になるんですか」
ふはっと可笑しそうに笑う和泉くんに、私もつられて笑う。
「もうちょっと抱きしめていてもいいですか?」
「は、はいっ……」
ぎゅっと抱きしめる腕に力が入って、少し苦しい。
でも、その苦しいさが現実だと教えてくれるみたいで、心地いい。
「和泉くんにこうされると、すごくドキドキするのに、落ち着きます……」
和泉くんの胸に頭を預けると、心臓の音が聞こえた。
あ……鼓動が、早い……。
和泉くんもドキドキしてくれているのだとわかって、頰が緩んだ。
「そんなこと言われたら離せなくなりますけど」
「離さないで、ください……」
普段は甘えたりはまだ恥ずかしくてできないのに、きっと浮かれていたんだと思う。