【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「いいのに、返さなくて」
向けられた笑顔は、相変わらず綺麗だった。
リナちゃんが言ってた話が、良く分かる。
こんなに綺麗で優しかったら、モテモテだろうなぁ……。
そんなことを頭の片隅で考えながら、返事を返した。
「そんな訳にはいきません……」
「母親がいつも勝手に入れてるだけだしね」
「そうなんですか?」
なるほど……男の人が持つには、シンプルなハンカチだと思っていたんだ。
こっそりポケットにハンカチを忍ばせる、会ったこともない佐倉先輩のお母さんが思い浮かんで、頰が緩んだ。
「良いお母さんですね」
佐倉先輩が優しいのも、素敵なお母さんの元育てられたからなのかな。
素直な感想を述べた私を見て、佐倉先輩はなぜか、目を見開かせた。