【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
私が扉を開けたことで、室内の人たちの視線が一斉に集まった。
その中に、和泉くんのものも。
まるで、『どうしてお前がここにいるんだ』とでも言いたげな視線に、思わず目を逸らした。
ど、どうし、よう……。
和泉くんの方、見れない。
こんな状況にも関わらず、ドキドキと騒ぎ出す心臓。
単純な自分が嫌になるけれど、和泉くんの姿を見るだけで、高鳴ってどうしようもなかった。
流石に隣なんて座れない、し……後ろに、立っていよう。
視線を下げたまま、教室の後ろ端に移動する。
周りから、私に向けられたのだろう声が飛び交っている。
「ちょっ、なんで花染さんがいんの?」
「俺初めて実物見た……マジで目の保養だな」