【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
嫌がられるより、もう無視されるくらいの方が、まだよかったから。
そっと、隣の席に座らせてもらった。
近づかないって、決めたのに。
和泉くんの迷惑にならないようにするって、あれだけ自分に誓ったのに……
こんなの、迷惑以外の、何ものでもない……っ。
「ごめん、なさいっ……」
和泉くんにだけ聞こえるくらいの大きさで、そう言った。
目をきつく瞑って、スカートの裾を握る。
「……俺、も」
聞こえた言葉に、自分の耳を疑った。
「……え?」
驚きのあまり、目を見開いて、和泉くんの頰を見る。
視界に映った彼は、私に見えないよう顔を逸らしていたけれど、はっきりと見えてしまったんだ。
髪の間から見えた、赤く染まった耳が。
「……言い過ぎ、ました」