【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


嫌がられるより、もう無視されるくらいの方が、まだよかったから。


そっと、隣の席に座らせてもらった。



近づかないって、決めたのに。

和泉くんの迷惑にならないようにするって、あれだけ自分に誓ったのに……


こんなの、迷惑以外の、何ものでもない……っ。



「ごめん、なさいっ……」



和泉くんにだけ聞こえるくらいの大きさで、そう言った。


目をきつく瞑って、スカートの裾を握る。




「……俺、も」




聞こえた言葉に、自分の耳を疑った。



「……え?」



驚きのあまり、目を見開いて、和泉くんの頰を見る。


視界に映った彼は、私に見えないよう顔を逸らしていたけれど、はっきりと見えてしまったんだ。


髪の間から見えた、赤く染まった耳が。





「……言い過ぎ、ました」

< 80 / 507 >

この作品をシェア

pagetop