【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
ーーーーこの前と、同じだった。
拒絶の瞳だ、これは。
「あっ……ごめん、なさい……」
慌てて椅子を引いて、道を開ける。
さっきまでは、声色も柔らかいものだったのに……
今は少し恐ろしくなるくらいの、声のトーンの低さだった。
私は何かまた、気に触ることをして、しまった……っ?
「和泉、くん……?」
恐る恐る名前を呼ぶと、和泉くんは私の方を見ることなく、口を開く。
「気安く名前、呼ばないでください」
そう言って、私の後ろを通っていく和泉くんは……
「必要最低限以外の会話、禁止されてるんでしょ?」
そう言い残して、足早に視聴覚室から出て行ってしまった。