【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
どうやったらいいんだろう。
……好きなのをやめるって、どうやったら、出来るんだろうっ……。
こんな、相手に迷惑がかかるような好意、今すぐ捨ててしまいたい。
和泉くんの声と瞳が、焼きついて離れなかった。
「静香ちゃん、お疲れ様」
頭上から声が聞こえて、すぐに佐倉先輩のものだとわかった。
だけど、顔が上げられない。
きっと今、情けなさ過ぎる顔をしているから。
「静香ちゃん……?大丈夫……?」
心配するような声色に、慌てて表情筋に力を入れた。
し、心配かけちゃ、ダメ……!
必死に涙を堪えて、顔を上げる。頑張って作った笑顔を、佐倉先輩に向けた。