【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
花染静香。
その名前は、聞いたことがあった。
けれど、彼女がその人物だと気づくのには、少し時間が必要だった。
花壇の彼女を見た日から、俺は彼女の姿が頭から離れなかった。
「和泉!今日の部活なんだけどさ」
休み時間に、声をかけてきたクラスメイトと部活のことについて話していた。
その時、突然騒がしくなり始めた教室に、俺は眉を顰めた。
うるさいな……特に男。
「おい、静香先輩いるぞ!」
近くにいた奴が、そう言って立ち上がった。
廊下の辺りだろうか、室内にいる人間の視線が、一斉にそちらに集まる。
静香、先輩?
確か……いつも男が騒いでる人か。
クラスの連中も、サッカー部の奴らも、よく話題にしている。