嘘の続きは
「気になってるけど、その人とは恋にならないって言ってたよね」

果菜ちゃんが静かにそう言った。
不意に果菜ちゃんの雰囲気が変わって、私たちの周りが澄んだ空気が流れ込んできたような気がする。

「そうだね」
私もゆっくりと頷いた。

「朋花さんはそれでいいの?」
果菜さんは穏やかだ。

果菜さんになら話してもいいような気がする。
ううん、話してみたい。私の話を。

「実は3年以上前に思い切ってぶつかったら木っ端みじんにされちゃって。それ以来恋愛はちょっとトラウマかも」

穏やかな果菜ちゃんの雰囲気に流されたのか私も過去の話をしてしまう。
彼女のふんわりとした雰囲気がとても心地いい。

「私はあんまり恋愛経験が豊富じゃないからアドバイスなんてできないけどね」と前置きして
「もしかして、朋花さんのお相手って専務の真島さん?」
果菜ちゃんは核心の名前をいい当てた。

驚いた。

確かに真島さんはタカトの事務所の専務だけど、真島さんの担当は主に俳優やモデルで音楽の方じゃない。だからタカトはともかく奥さんの果菜ちゃんと真島さんはあまり接点がないと思っていたけれどそうでもないのかもしれない。

「そっか」
返事をする前に私の表情を見て果菜ちゃんが頷いた。

「北海道の映画祭で真島さんに出会ったときの朋花さんの様子見てピンときちゃった」
< 106 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop