嘘の続きは
「朋花さん。好きに生きていいと思う。これは朋花さんの人生なんだからね」
それからゆっくりと彼女はそれはそれは美しい微笑みを浮かべた。

「好きでいたければ、好きでいていいんじゃないかな。本気で諦めたかったら諦めればいいけど。私は朋花さんと真島さんが釣り合ってないとか似合わないとか全然思ってない。むしろ、釣り合ってないとか似合ってないのは私と貴くんのほうでしょ」

「果菜ちゃんとタカトが似合ってないはずないし」

そんなこと絶対にない。
そりゃ交際発覚の時は一般人と人気ギタリストの恋はいろいろ言われたかもしれないけど、その後の報道や今回の入籍発表を見ても二人はお似合いだ。


「ふふ。ありがとう。でも、私は似合わないって言われても貴くんの隣に居続けるから。覚悟は決めたの。そうじゃなくて、私が気になったのはね、朋花さんと真島さん、二人がどっちも本当の自分を隠して接してるように見えたから。ま、特に真島さんだけど」

ぎくりと身体が反応しそうになった。
まさか、影武者してた時に見られたってことはないよね。

「・・・果菜ちゃんが私と真島さんが一緒にいるところを見たのは映画祭の時だけだよね?」

それも私と真島さんが会話したのはほんの少しだけ。
助けてもらってお説教された時と映画祭の会場から抜け出す前の少しの時間。

「うん。そうだけど?」

私の影武者がバレてたわけじゃないんだ。じゃあ映画祭のあの短時間で果菜ちゃんの目に私たちはどう映っていたんだろう。

「果菜ちゃん、本当の自分って何?」
「自分が1番楽な状態とか気持ちいい状態かな。素の自分。朋花さんは出せてる?真島さんに」

確かにあれから私は何年も仮面を被って生きて来たからね。
「出せてないね。でも出せなくなったのはフラれてからで、その前は出していたと思う」

「そっか、うん。それはわかるような気がする。でも問題は真島さんの方だと思う。---あの人、朋花さんに本当の自分を隠してるって思うんだよね。だから難しいなって思っちゃったの」
< 109 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop