嘘の続きは

夜のドライブ


タカトたちにせかされたわけじゃないけど、あちらでこの女子会が終わるのを待っている人がいると思うと何となく落ち着かず。

土台無理なのだ。ラブラブの新婚夫婦め。
タカトが来てからは果菜ちゃんもどことなくそわそわしているし。

真島さんも早く終われとばかりに離れた席からたまにこちらに視線を送ってきたりして、とてもじゃないけど落ち着いてお酒を飲む気になれない。

せっかくのデートだったのにと心の中で舌打ちをした。
果菜ちゃんとじっくりと話もできやしない。

・・・もうダメだ。
「ゆっくり飲むのはまた今度にしようか。あっちから”まだか”って言われてる気がして落ち着かないし」

今夜は早々に諦めてタカトが地方に行っている時にでも果菜ちゃんをまた誘うことにしようと切り替えた私に果菜ちゃんはも肩をすくめた。

「そうだね、私も気になって落ち着かないの。特に専務さんの視線が」
眉を下げて困ったように果菜ちゃんが小さく笑う。

視線を感じていた私も肩をすくめた。
「よっぽど北海道の件で私のことを腹立たしいと思ってるか、新婚夫婦の邪魔をする空気を読めないやつだと思ってるみたいだね。ごめん、イヤな思いをさせて」

「腹立たしい?違うでしょ。そんな感じの視線じゃない気がするよ。むしろ真島さん、朋花さんに話しかけたがったてるみたいじゃない?」

「まさか。でも北海道で迷惑かけてしまったしお説教の1つでもしたいのかもね。はぁ。真島さんがここにいると余計に居心地悪い。今夜は早く帰ろっか」

そういうと果菜ちゃんは困った顔をしながらも頷いた。

ため息をつきながら帰り支度を始めると、「朋花さん」と果菜ちゃんが改まったような声を出した。
ん?と顔を上げた私に
「掛け違えたボタンならかけ直せばいいのよ」
果菜ちゃんが大きな黒い瞳を柔らかく緩めて穏やかな笑顔で囁いた。

何の話?

思わず自分の洋服に視線を向けたけれど、今日はボタンのあるブラウスは着ていない。
何のことかわからず首をかしげると、果菜ちゃんは視線をタカトたちのいる方へと向けた。

「後で考えてみて」

そう言って果菜ちゃんは先に席を立ってしまった。

その背を追って私も歩き出したけれど、私は素直に頷くことができなかった。


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