嘘の続きは
流れるような美しい曲に聞き入っていると、過去のあれこれを思い出す。

私が高校生の頃、真紀が役に入り込みすぎたせいでスランプになり酷く落ち込んでしまったということがあった。
そんな真紀が心配で私は家を出てひとり暮らしをする真紀のマンションで一緒に暮らすことにしたのだ。

高校生の私と映画の撮影中で不規則な生活をする真紀は一つ屋根の下にいても顔を合わせることは少なかった。
でも、自宅マンションに帰れば自分以外の家族の気配がするという日常に次第に真紀の尖った心が癒されそれがスランプを脱出するきっかけになったのだとずいぶん後で真紀から聞いた。

私のしたことは間違っていなかったわけだ。

ただ、真紀のマンションから私の通学する高校に通うには少し交通の便が悪かった。
直線距離はさほどでもないのに、乗り換えを数回繰り返さなければたどり着けず、通学時間はかなりのものだった。

そんな状況を見かねた真島さんがたまに車で学校に迎えに来てくれたり朝学校に送ってくれたのだ。

今から考えれば真島さんにはずいぶん手間だったと思う。
だけど大人の男性の車に二人きりで乗ることなどなかった私は大いにドキドキしていてそんなこと考えもしなかった。

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