嘘の続きは
他にも夏休みなどは真紀の付き人もどきをして一緒に海外の撮影に付いていったこともあった。
現地のコーディネーターと流暢な英語でやり取りをする真島さんの姿に見惚れてしまったのは海外マジックではないはず・・・?

バレンタインにチョコレートを渡したらお返しに真紀と一緒にフランス料理をご馳走になったとか、真紀の主演映画の試写会に誘ってもらい、他の共演者と共に見る真紀とは別に離れた席で私たちは肩を並べて一緒に観たとか・・・・。

思えば、いつもこの人は優しかった。

大好きな音楽を聴きながら昔の懐かしい思い出に浸っていると、今までの居心地悪さを忘れて徐々にゆったりと呼吸ができるようになった。

ーーー私は子どもだったけど本当にこの人のことが好きだった。

大人の男性に対する憧れがあったことは否定しない。
でも、それでもずっとずっとこの人のことが好きだった。

愚かにも受け入れてもらえるかもと思ってしまったあの時、ああして拒絶されてもなお忘れることができなかった。
恨んで憎んでも忘れられなかった男、真島さんが今私の隣にいる。

チラッと運転席の男の顔を盗み見ると、前車のテールランプの赤色に染まり眩しく光る瞳と長いまつ毛、ハンドルを握る逞しい腕に目が離せなくなりそうで慌ててぎゅっと目をつむった。

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