嘘の続きは
キッチンから戻ってきた真島さんの手にはミネラルウォーターのペットボトルと缶ビール。

「座れば?」
ミネラルウォーターを手渡されて横のソファーを顎で示される。
真島さんは既に缶ビールに口をつけている状態だ。
アルコールを飲んだということはもう私を送る気はないらしい。私もタクシーを呼べば済むことだからそれに異存はないのだけど。

どうしようもなくておとなしくソファーに座ると満足そうな笑みを浮かべる真島さんの顔が正面に見えた。

「ここは?ずいぶん高級な部屋ですね」

パッと見ただけで何畳あるのかわからないリビングルームに大きな窓とドア。
床材も無垢板のフローリング部分とテラコッタ部分がある。

ただ広いリビングにあるのはソファーにテレビだけ。
奥のキッチンには大きな冷蔵庫があるのが見えるけど、ただそれだけ。
なんというか、がらんとしていて生活感がまるでない。

「ここは俺の持ち物。事務所のではないよ」

待ってましたとばかりに真島さんが満面の笑みで答える。
どうやらこの質問を待っていたらしい。

「こんな高級なお家ですか・・・すごいですね。そ、それにしても生活感がないんですが・・・あ、ここマンションですか?まさか一戸建て?」

寝ている間に車からここに移動した私は周りの状況がわかっていない。カーテンの引かれた部屋では外の様子も全くわからない。
キョロキョロと部屋の中を見ても感じるのは生活感が全くないというだけ。

時計もなにもないんですけど。
自分の持ち物ってことはここが自宅なんだろうけど、この人ここでどんな暮らしをしているんだろう。

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