嘘の続きは
「タカトたちの住まい探しをしててたまたまここを見つけて先月買ったんだ。まだここで暮らしていないから生活感がないのは当たり前ってところだな」

へええ、買ったばかりの新居なんだ。

まだ住んでない?え、あれ?ってことは。
「ごめんなさい、そんなお宅のベッドを先に使わせてもらっちゃって。申し訳ございません」
慌てて頭を下げると、真島さんは笑い出した。

「いいよ、気にするなって。どうせ一緒に寝るために買ったんだから。どっちが先に使ったって一緒だろ?」

「は?」

一緒に寝る?
空耳かな。
今意味不明の発言があったようだけど。

「何言ってるんですか。笑えない冗談はやめて下さい」

「いや、冗談じゃないけど」

この夜中に何しつこく言ってるんだとムッとして真島さんを見ると、彼は一度立ち上がり私の隣に座り直した。

近い、近いよ。膝が当たってるし。
動揺して反対側に身体を反らすと、右手を握られる。まるで逃がさないとでもいうように。

「どどっどど、どうしたんですか」
焦ってうまく言葉が出てこない。

「真紀もやっと落ち着いた。結婚生活もうまく行ってるし、俺の仕事も軌道に乗った。もう俺も自主規制も遠慮もしなくていい頃合いになったってことだよな」

ニコリと笑って握っている私の右手に両手を重ねてきた。

手は温かいし、身体も近い。もちろん顔も。
で、真島さんからはお風呂上りでシャンプーかボディソープのいい香りもする。

いやいやいや
それ以上に何だかわからないし今の彼の発言の意味が全く理解できない。

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