嘘の続きは
「もちろんです。それよりも姉が皆さんに迷惑をおかけして申し訳ありません」
私はぺこりと頭を下げる。

「いいえ、俺たちは迷惑だなんて…」
鈴木さんの声の上に
「朋花がそう思う必要はないんだ」いきなりあのオトコの声が被った。

「真紀の事情に朋花が巻き込まれただけだ。だから謝るのはこっちで朋花が頭を下げる必要はない」

なぜか憮然とした顔をしてぶっきらぼうに言い放つオトコ。
おまけに呼び捨て。

でも、これではまるであのオトコが真紀の身内で私が他人のようじゃない?


ーーそういえば、いつだってそうだった。

真紀の1番近くにいて常に真紀の為になることだけを考えて動く人だった。
・・・だから若くして結婚した奥さんともうまくいかなくなり離婚したんだろう。

本来秋野真紀の身内ならプライベートを犠牲にして献身的に尽くしてくれたこのオトコに対して感謝するべきなんだろうけれど、私には昔からうまくそれができない。

思春期の頃、真紀とこのオトコとの関係に対して感じた羨ましさはやがて嫉妬になり、二人の関係を冷静に考えられないという時期があった。私はこのオトコが大好きで仕方なかったから。

もちろん態度に出さないように気を付けていたつもりだけど、姉を含めて周りは気が付いていたのかもしれない。

誰からも何も言われなかったけれど、あの頃の私はまだ子供だった。

でも、まぁそれも全て過去の話。


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