嘘の続きは
「え?でも、いっつも不機嫌そうな仏頂面してたけど」

「照れ隠しよ、そんなの。ああでもしてないとデレちゃって朋花に自分の気持ちが隠せなくなるとでも思ってたんでしょ。もう今さらなんだから本人に聞いてみなさいよ」

姉はレモンチキンとパブリカのソテーのお皿を手にすると、パクパクと口に運んだ。
結構な勢いで口に運んでいるが、何故だか全く下品に見えない。それどころか綺麗な所作に見えてしまうのはナゼだろう。
女優恐るべし。

「あの人さ、前だって朋花に避けられて会えなくなったからって私のとこに朋花の情報を手に入れるために頻繁に顔を出すもんだから、私との変な噂が出ちゃってこっちはいい迷惑だったんだからね。
元マネージャーのくせに所属女優の足をひっぱるなんて問題外。他の仕事はできるくせに本当に不器用な男よね」

はは。
あれってそういう事だったの?
私の両肩からゆるゆると力が抜けていく。

「あ、もしかして、朋花も誤解してた?」
「まぁ・・・ちょっと」

上目遣いで返事をすると、あらあらと姉は呆れたように笑った。

「でも、わからないでもないか。あの男の態度がああだったんだから・・・
ねえ、やっぱり今からでもやめていいのよ。結婚は勢いも必要だけど、あの人にあんな勢いで籍を入れられてしまったんだから」

右手のフォークを指揮棒のように振りながら姉が頬を膨らます。

「そうよ、いくら真島さんが朋花のこと好きだからって朋花にはもっと若くて素敵な男と出会えるかもしれないのに、もったいない。
うん、やめていいのよ」

「お姉ちゃんったら」
ワインを飲んで少し酔った姉は段々ヒートアップしはじめている。


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