嘘の続きは
そうか“本物の家族”なんだ。

「家族が増えるって、素敵ですね。こんなに素敵なお義兄さんが出来て幸せです。
お姉ちゃんありがとう」

「義妹ができたと思ったらすぐに義弟も増えたけどね」
お義兄さんの苦笑いに姉も笑う。

「そうね、しかも可愛げのないおっさんの」

姉の容赦ない言葉に私も真島さんの顔を思い出した。
いつまで経ってもアパートを引き払わない私に焦れてムッとしてたっけ。
夕飯に嫌いなピーマンを出すと眉間にしわが寄ったり、酔うと青山君にお説教をしたり。

家にいるときの真島さんは専務の真島さんじゃない。
かっちりとセットされた髪もシャワーの後では前髪が無造作に下りていて若々しく見えるし、スーツじゃないTシャツにスウェットパンツ姿で寛ぐ姿なんてもう毎日がレア。

朝が弱い私のために朝食は真島さんが作ってくれることも多い。
最近では私の会社の飲み会のお迎えも彼の仕事になっている。
飲んだ時や仕事で遅くなる時は絶対に連絡するように言われていて、連絡すると必ずお迎えに来てくれるのだ。
彼の仕事の都合で接待などもあると思うのだけれど、それは一体どうやってやりくりしているんだろう。聞いても教えてくれないから聞くのを諦めたけれど。


ーーー真島さんっていつ帰ってくるんだっけ。

急に胸が切なくなって彼に会いたくなった。
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