嘘の続きは
「そうだ、朋花。真島さんっていつ帰ってくるんだっけ?」
「土曜日って聞いてる」
「ふうん、じゃあ私たちと一緒に金曜の夜に食事に行きましょうよ。ちょうど麻布のシェフのお店に予約してあるの。確か朋花も行きたがってたわよね」
「え、ホントに?真島さんいなくてさみしいから行きたいな。でも、あのお店なかなか予約取れないって聞いてるし、急に私がお邪魔してもいいの?」
「大丈夫だよ。実はあのシェフ俺の知り合いだから。一人増えるくらい大丈夫だよ。そう連絡しておくし」
「決まりね。行きましょう」
両手をパチンと会わせて喜んでいる姉とそれを見て頬を緩める姉の夫の姿に自分の心もほっこりとしてくる。
以前食べられなかったシェフの料理も楽しみだ。
それから一時間ほど姉夫婦と楽しくしゃべった後、事務所のお抱えのタクシー会社の車で自分のアパートに戻った。
帰りの車の中で考えたのはやはり彼のことだった。
回り道をした私たちだけど、今こうして共に歩くことを許された。
あの頃、辛かったことを思えばなんて幸せな状況にいるんだろう。
折しもあの日と同じ雨が降ってきた。
エンジン音とワイパーと窓にあたる雨の音。
ああ私は何に不安になって何に不満があったんだろう。
ーーーバカだ、私。
影武者をしていた時だって必要ないのに準備の時間から彼はそばにいてくれた。
いつだって私のことを見ていた。
あの日からこんなに愛を伝えていてくれているのに私は何をしているんだろう。
私はスマホを取り出し、素早くタップした。