嘘の続きは
「私は真紀の妹ですから、迷惑をかけている姉に成り代わり謝罪するのは当然じゃないでしょうか」

私が表情を硬くして刺々しく答えると、鈴木さんはサッと顔色を変え、室内はさすがに微妙な空気になる。

「あ、あの…朋花さん」
と鈴木さんがおろおろし始めた所にタイミングよくドアが開き真紀が控え室に戻ってきた。

「ねー鈴木さん、私のスマホってどこだっけ？」

マネージャーに声をかけながら仕事を終えた真紀が控室に入って来ると明らかに辺りが色付いたように明るくなった。

「あ、朋花。準備終わった？
おお、メイクもばっちりね。さすがは田所さん。自信ないわーなんて言いながら腕がなまってるどころかさらに上がってるなんて、これはもう神レベル？」

私を見た真紀の表情も明るくなりこの部屋の雰囲気は全く別のものになる。
女優秋野真紀は仕事が終わり女優の皮を脱いで人間秋野真紀に戻っても、やはり美しさと身にまとうオーラは周囲を変える。

私が悪くした空気感を真紀は一瞬で薙ぎ払ってしまった。

「じゃあさっさと着替えて出ようかなー」

真紀はお茶を淹れてくれようとしたマネージャーを制して着替えスペースに当てられているカーテンの奥へと鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌で消えて行った。

表情を硬くしたまま冷気を放つ私と正反対に陽気で太陽のような姉。

「あ、隼人さんから連絡が入ってるわぁ」

がさがさという衣擦れの音だけじゃなくて案の定鼻歌も聞こえてくる。

いよいよ私の出番が近い。

私もここに来るまでに着ていた地味なスーツを真紀が普段使っている小型のキャリーバッグに詰めかえここを出ていく支度を始めた。

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