嘘の続きは
男は真島さんを全面否定するように鋭い目を向けている。

「それに、私は個人的に彼女に惹かれている。彼女に私のことを知ってもらいたい、話をしたいと思っているのが悪いことなのか?あなたが彼女のプライベートな付き合いにまで口を出すとは行き過ぎじゃないんですか?」

そんな男の言葉にグッとと真島さんの背中に力が入ったように見えた。私に背中を向けているから表情は見えないけれど。

「柿崎さん、はっきり言いますが、」
「私、真島の家内です。夫なんですから私の付き合いに口を出すのは当たり前ではないかと思いますが」

今度は私が真島さんの話にかぶせてはっきりと声を出した。
もちろん、真島さんの背中から一歩前に出て。

「か、家内?」

男は大きく目を見開いて私と真島さんの顔を見比べるようにしてきた。
声が裏返っているから相当驚いたのかもしれない。
それに何故か、真島さんまで一瞬驚いた顔をしていた。---何で。

「ええ。先ほどは旧姓に反応してしまいましたが、今は真島朋花と申します。真島の家内ですが何かご用でしょうか」

日ごろの訓練の賜物の営業スマイルを浮かべると、男は「へえ」っと片眉を上げた。

「こっちの予想以上に度胸もあるみたいだ。…だからこそ残念だ、人妻か。しかもあの真島専務の奥さんだとはね」

「せっかくのお誘いですが、私自身は芸能界の内側に入りたいとは思いませんのでどうかお引き取り下さい」

真島さんは押し黙ったまま強い視線で男を見つめているのだけど、目が帰れと言っているのがありありと見て取れる。

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