嘘の続きは
「そっか。残念」

男はあっさりと引いてくれた。

「でもさ、もし真島専務に飽きたり離婚したりしたら俺に声をかけて欲しいな。女優になるかどうかはともかく君に興味があるんだ」

はい、これと素早く名刺を私の手に握らせて男は私に向けてウインクするとさっさと靴音を響かせて立ち去った。

その背中をちょっとだけ目で追い、真島さんに視線を向けると彼はまだ男の背中を見つめていた。

「真島さん?」

彼のスーツの袖をツンっとつまむとやっとこっちを向いてくれた。

「・・・朋花。芸能界、断ってよかったのか?」

「え?」

何言ってるの?今さら?
「そんなことよりどうしてここに?」

驚いた私の顔を見て真島さんも驚いた顔をしている。

「あ!」
「あ」

そして一つの可能性に気が付いてまた二人同時に声を出してしまったのだ。

「・・・・姉がまた・・・申し訳ありません」

「いや、俺も長い付き合いなのにまんまとやられた・・・」

真島さんはがりがりと頭をかきむしり、私は頭を下げた。

「一日早く帰国してお仕事は大丈夫?」

「ん、ああ、そっちはいい。何とかなったから気にすんな」

はぁあ~
また姉だ。あの人は一体何がしたいんだか。
私たちは顔を見合わせてがっくりと肩を落とした。
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