嘘の続きは
…
美味しかった。
本当に美味しかった。
ひとつひとつの食材が丁寧に調理されていて、見た目も味も期待通り。ううん、期待以上。
美味しいお酒と美味しいお料理に舌鼓をうって、大満足。
何と言っても丸山シェフのお料理は三度目の正直でやっと頂くことができたのだし。
上機嫌になった私たちは少し遠回りをして夜の街のイルミネーションを見ながら一つ先の駅まで歩いて帰ることにした。
少し酔って満腹になった身体は重いけれど、心はとても軽かった。
肩を並べて歩きながら指先が触れると、そのまま手を繋いだ。
指と指を絡める恋人繋ぎ。
私たちは恋人期間が無く結婚してしまったけれど、今が恋人期間みたいなものなのだと思う。
「朋花、後悔してる?」
「何を?」
「もちろん、俺と結婚したことをさ」
「してない。なぜ?」
強引に婚姻届を書かせたくせに何を今さら、と思いつつ彼の顔を見ると彼の瞳は少し揺れていることに気が付いた。
私が完全に同居しなかったことで彼を不安にさせていたのかもしれない。
「私の中でも多分一択だったと思うの。真島さんと結婚するか真島さんのことだけ思ってずっと生きていくか」
「それは二択って言わないか?」
「ううん、一択だよ。どっちも真島さんのことだけ思って生きていくんだから」
「そうか」
繋いだ手の力がちょっと強くなった。
「俺さ、さっき朋花が真島の家内ですって言ったのを聞いて、ぐっと来てさ。大人げなくも感動した。・・・ありがとう、朋花」
「改めて言われると照れるんですけど・・・」
頬が熱くなったのはお酒のせいだけじゃない、たぶん。